峠には道の神、「道祖神(どうそじん)」がいる。その存在を主張することもなく、道端にちょこんといらっしゃる。地域に根差した神とは、案外そんなものかもしれない。
道祖神は、集落と集落の境や村内と村外の境界、道の辻、三叉路などに石碑や石像(お地蔵さま)の形ちで祀られている神である。
古の日本国人は、地勢状の山の上と下、故郷と異郷を分かつところ、最も標高の高い点を「峠」と呼ぶようになる。そして、今も多くの人々が手を手向ける神聖な場となっている。
峠とは、山道を登りつめたところ。山の上りと下りの境目。とうげ。『万葉集』に「多武気」の例があるとおり、古くは「たむけ」といい、室町時代以降、「たむけ」が「たうげ」に転じ、さらに「とうげ」に変化した。
「たむけ」とは「手向け」のことで、神仏に物を供える意味の言葉である。これは、峠に道の神がいると信じられており、通行者が旅路の安全を祈って手向けをしたことからと考えられている。漢字の「峠」は日本で作られた国字で、「山」「上」「下」からなる会意文字である。
語源由来辞典より
日本の国字である「峠」
「峠」は日本の国字、中国製ではなく和製漢字だ。同様の和製漢字には、榊(さかき)・畑(はたけ)・辻(つじ)などがある。これらの文字からは、日本の原風景が見えてくる。
特に「峠」は三つの文字を一つに、これ以外はないという絶妙の組合せとバランスで構成されており、もはやその美しさは文字の域を超えている。
そんな峠をバイクと共に巡り日本を知る旅が、このブログ「バイクと峠」だ。