八草峠は、そこに立つ「昇格記念碑」や「お地蔵さま」を見つめていると、地域住民の峠道への思いの深さが伝わってきます。この岐阜県と滋賀県を隔てるこの峠道は、牛馬道から酷道、そして八草トンネルの開通で旧国道303号へと遍歴を重ねてきた歴史を持っています。
明治時代の八草峠は、土倉鉱山から採掘した銅の鉱石を人や牛馬の背に積み運ぶルートとして利用されてきました。戦後には、資金難から政府が投げ出した道路整備を地域住民が協力して行なった、苦難のエピソードが残っています。それを知ると、刻まれた「昇格記念碑」の文字に深みを感じます。
八草峠・Pass Hunting NO.66
- 調査:
- 峠名:八草峠(はっそうとうげ)
- 路線:旧国道303号
- 所在:滋賀県長浜市木之本町金居原∧岐阜県揖斐郡揖斐川町坂内川上
- 座標:35.576698,136.32278
- 標高:750m、路面:オンロード
- レビュアー:峠ノ太郎(セロー250)
- おすすめ度: 4
八草峠へのアプローチは、国道303号上の八草トンネル両端、滋賀県側と岐阜県側からの二つの道筋が存在します。しかし、本記事投稿時には、滋賀県側[A点]からは崩落で峠までは進めません。そこで、もう一方の岐阜県側[B点]からアプローチしました。
八草峠 Pickup Photo
国道303号(金居原バイパス)に入ると、ファンシーな案内図が出迎えてくれる。
一つ目の金居原トンネルをくぐる。
八草トンネルの手前の右手が滋賀県側から八草峠への経路ですが、残念ながら崩落による通行止が続いています。
3,025mの八草トンネルを通過すると、岐阜県に入る。直ぐ右手に八草峠への岐阜県側からの経路がある。
からの峠道の路面は、その3割程度が浸水していた。旧国道のため全面舗装されている。昔、この道が国道だったとは。
滋賀県方向を望む八草峠の全景。
峠から南下する道は、地形図上では行き止まりになっている。
国道303号線への昇格記念碑。2001年4月26日には、八草トンネルが開通し旧道となった。国道の番号表記に「線」と入っているのは、気になるところ。
峠名の刻まれた石柱。
八草峠を見下ろす位置に立つ「お地蔵さま」。
八草峠周辺観光案内図
水準点(標高の基準となる点)には、滋賀県・国道303号・側点NO.0と表示されていた。
三角点?
八草峠からの滋賀県側へ下るルートには、通行禁止の看板がある。
八草峠の四方山話
昭和二十二年、杉野村と岐阜県坂内村が林道開発に着手した。食糧難、しかも機械力のない敗戦直後で、土木業者は途中で投げ出した。しかし、地域住民の手で峠までの九キロ、幅四メートルの道を造ったのである。旧道は例年12月1日~翌年5月頃まで冬期閉鎖されています。また、他に国道303号上にある峠は、万路越・七里半越・追坂峠・水坂峠・寒風峠(全て滋賀県)などがある。
参考文献:『近江の峠道 ‐その歴史と文化』
- 【八草峠へのツーリングルート】
≫ ソロキャンプツーリング、岐阜県の県境・秘境峠巡り - 【都道府県別・峠の一覧表】
≫ 滋賀県の峠、一覧表
≫ 岐阜県の峠、一覧表
編集後記
長~い!
うねって、曲がって、蛇行して、その距離21.2km。こんな旧国道は、初めてです。滋賀県側が崩落で通行できずに残念でしたが、岐阜県一本目の峠としては、十分な迫力のある峠でした。