黒く光沢のある表面を手で撫でると、ひんやりとした冷たさが伝わってくる。旧国道429号上にある鳥ヶ乢に建つ鶏冠(とさか)のモニュメントは、石と鉄の中間のような鉱物で造られていた。これが鉄鉱石という物なのだろうか。
峠の語源、「手向け(たむけ)」は、故郷を離れ異郷の地に足を踏み入れる旅人が道中の無事を祈って道祖神に手向けた(手を合わせた)場所からという説がある。この道祖神とは、「峠のお地蔵さま」のことである。
たばこを一服しながら、この場違いなモニュメントを眺めた。お前には、誰も手を合わせない。もちろん花を添える人もいない。ここは、「お前が立つような場所ではないよ。」と思いながら。
鳥ヶ乢・Pass Hunting NO.119
- 調査:
- 峠名:鳥ヶ乢(とりがたわ)
- 路線:旧国道429号
- 所在:兵庫県宍粟市千種町岩野邊∧同市波賀町齋木
- 座標:35.150278,134.498831
- 標高:629m、路面:オンロード
- レビュアー:峠ノ太郎(セロー250)
- おすすめ度: 2
鳥ヶ乢は、2007年1月に鳥ヶ乢トンネルが開通し2008年11月に供用開始され、国道の指定から外れた。現在、国道429号は「とりがたわ道路」と呼ばれている。
鳥ヶ乢の地図
- PIN:鳥ヶ乢
- 1点:波賀町側進入口
- 2点:千種町側進入口
鳥ヶ乢 Pickup Photo
PIN:旧国道429号は、近年まで宍粟環境美化センターの車両が通行しており、また荒尾山への登山者が利用している。
トリガタワの由来
その昔、千種町岩野辺と波賀町斉木との境界の峠に観音様をお祀りしたお堂があり、両町から村人が参っておりましたが、ある日、双方の村人がお互いに自分の村にこの観音様を持ち帰りお祀りしたいといいだし、この峠で話し合ったがどちらも譲らず夕方になっても決着がつかないので古老の提案で、明日の朝一番、鶏の声を合図に村を出て早くここに来たほうが連れて帰ることで話し合いがつき、夕闇の中、それぞれ村に帰っていきました。岩野辺の人々が山をおり高橋の所まで帰ったとき、急にあたりが夜明けのように明るくなり大石の上で黄金の鶏が目前に現れ大きく羽撃き、「コケコーロー」と天に向かって鳴いたので村人は大変不思議なことが起こったと驚き、これは、観音様が岩野辺に来たいというお告げに違いないと、早速引き返して観音様を大切に持ち帰りお祀りしたそうです。
これが現在、岩野辺福海寺の本尊だと言われており、その頃からこの峠を「トリガタワ」と呼ぶようになったそうです。
鳥ヶ乢の四方山話
波賀町齋木地区は、江戸時代に鉄穴流しで栄えた集落であった。
鉄穴流し(かんなながし)とは、江戸時代に中国山陰地方で大規模に行われた砂鉄採集方法である。その手法は岩石中にある砂鉄を河川や水路の流れの破砕力を利用して土砂と砂鉄を分離させ、比重差によって砂鉄のみを取り出す。採り出された砂鉄は主にたたら製鉄の製鉄原料に用いられた。-wikipedia-
[参考文献]『播磨の峠ものがたり』
鳥ヶ乢の位置図
関連リンク
- 【鳥ヶ乢へのツーリングルート】
≫ ソロキャンプツーリング、兵庫県と鳥取県の11峠越え - 【都道府県別・峠の一覧表】
≫ 兵庫県の峠、一覧表
編集後記
モニュメントの語源を辞書で引くと【monument】ラテン語で「思い出させるもの」とありました。峠の地蔵さまは「思いを願うもの」と言ったところでしょうか。