「さて、次はどの峠へ行こうか。」とツーリングマップルを開け素敵な名の峠を見付けると、バイクで訪ねてみたくなる。切窓峠の名を見た時には、風流で趣があると感じた。
実際に訪ねてみると、その姿は名のイメージとは縁遠く少々がっかりした。しかし、その気持ちは不思議な形の石像によって救われた。この石像、見れば見るほど面白い姿をしているのだ。
顔は、何処かの誰かに似ている。お尻は、表面が白く劣化して“おしめ”をしているようだ。額には、キン肉マンのように「切窓峠」と彫ってある。いつも見る「峠のお地蔵さま」とは全く異形の姿に、どうしてもこの石像の正体が知りたくなった。
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切窓峠・調査NO.114
切窓峠の周辺地図
- T点:切窓峠
- A点:謎の石像
- B点:行止り
- C点:行止り
T点の切窓峠の対側側には、上りのダートB点とC点がある。旧峠かと思い念のために入ってみるが、両方向とも途中で道が消失していた。
切窓峠 Pickup Photo
T点:兵庫県宍粟市山崎町青木側の画像。現地での勾配の様子から切窓峠の位置は、ここだと推測した。
T点:兵庫県宍粟市山崎町葛根側の画像。左手は、中国自動車道のフェンス。
A点:南東側斜め上の中国自動車道には、「標高263m 切窓峠」と看板表示があった。高速道路の登坂車線に、なぜ峠の表示が必要なんだろうか。理由が知りたいところだ。
A点:この方が切窓峠の「謎の石像」。なぜ、おでこに峠の名を刻んだのか?この人は誰なのか?このポーズは、何を意味しているのか?
A点:後ろから見ると、おしめをしているようだ。頭の出っ張りは、ちょんまげ?気になって仕方がないので正体を調べてみることにした。
謎の石像の正体とは
電話で調査した内容
[1人目]中国自動車道より一段高い県道の所ですよね!切窓峠は、知ってますよ。石像ですか?あ~ありますね。かなり前からありますね。変な顔の・・・。佐用町の彫刻家が造ったような話しを、聞いたことがありますけど。本当かどうか、知りません。
[2人目]確かに、石像ありますね。すみませんが、うちでは把握できてません。○○方面の方だと、もしかしたら知っているかもしれませんよ。幾つか紹介しましょうか。
[3人目]石像ですか・・・。すぐには分かりませんけど、調べてお電話しましょうか。[電話頂く]2008年4月8日発行の神戸新聞・姫路西地方版に記事がありました。同じように、あの石像が何か調べたようです。記事には10年位前に、不法投棄がひどくて、それを防ぐために建てたようだと書いています。しかし確証は、無いようです。
[結局]石像の正体は、分かりませんでした。まだ他にも聞き取りのできそうな先はあったのですが『謎の石像』のままの方が素敵な感じもするので、これ以上調べるのは止めました。しかし、公道上にあるものなので勝手に建てたとは思えません。新聞記者が調べても分からないとは、実に面白い。
切窓峠の四方山話、名の由来を考える
まず「切」は、土木建築などで今でも使われている「切土」を例に、「土地を切る」すなわち土地開発や改良と関係があるのではないか仮定して調べてみた。ちなみに、建築で切窓とは『壁・羽目板などを切り抜いてつくった明かりとりの窓。』のことを言います。
「切」は、おもにキリ・ギリ・ギレなど開拓・開発地名である。「切」のつく地名総数は約5,000で700種類あり近畿地方によくみられる。これは奈良時代から平安時代にかけて、近畿地方が大和政権の中心地であり開発が進んだことによると思われる。
参考文献:『「キリ」地名と「アゲ」地名、深田新一郎』
次に「窓」は、愛媛県が興味深い。同県内には「窓」の付く峠が3ヶ所、「まど」と読む峠が1ヵ所と集中しています。
- 今治市玉川町 :窓の峠
- 宇和島市三間町:窓峠
- 西条市丹原町 :窓峠
- 伊予市中山町 :間戸峠
語源探求にハマると、その奥深さに溺れてしまいそうになります。「ハマっても構わないぞ!」言う方は、こちらの「窓」を開けてみて下さい。≫ 『言葉と地名:今井欣一』この方、凄いです。
切窓峠の位置図
- 【切窓峠へのツーリングルート】
≫ ソロキャンプツーリング、兵庫県と鳥取県の11峠越え - 【都道府県別・峠の一覧表】
≫ 兵庫県の峠、一覧表
編集後記
播州播磨の国と聞けば、現在NHKで放送中の大河ドラマ「黒田官兵衛」縁の地ですが、主演の”ひらパー兄さん”こと岡田准一さんは、地元の枚方市出身です。年間100万人の来園が達成できなかったらクビになるようなので、ひらパーへも是非行ってみて下さい。