この世界で最も高所にありバイクで越えることのできる峠は、どこの国で標高は何メートルあるのだろうか。ネットで検索してみると、「この峠だ!」「それは間違ってるだろう!」と喧々諤々、決め手がありません。世界一の高さ・広さ・長さ、などを決めるのは、意外と難しいことのようです。
その理由は、高さを水増しする国や国際紛争が影響しているためです。世界は広くて、ややこしいですね。それならば、平和で穏やかな日本の片隅で、「The highest motorable pass in the world.」世界で最も高い、車両の通れる峠を調べて、順位を付けてみることにした。
The highest motorable pass in the world.
- 第1位:マーシミク峠(Marsimik La):標高5582m
- 第2位:セモ峠(Semo La):標高5565m
- 第3位:カラコルム峠(The Karakoram Pass):標高5540m
- 第4位:スゲ峠(Suge La):標高5430m
- 第5位:チャンラ峠(chang La):標高5360m
- 第6位:カルドゥン峠(Khardung La):標高5359m
- 第7位:タンラン峠(Tanglang La):標高5328m
- 第8位:タングラ峠(Tanggula Pass): 標高5231m
- 番外編:チュリニ峠 (Col de Turini) : 「進撃の巨人VSスバルフォレスター」
エントリー資格
論争を整理して順位を付けるためには、まずルール・基準・定義付けが必要です。そこで、エントリー資格を以下の3点とし、この全てに適合した峠の中からBEST8を決定します。
- 画像・動画・Google mapなどで、その存在が確認できること。
- バイクもしくは、その他の車両での走行が確認できること。
- SRTM (Shuttle Radar Topography Mission):NASAスペースシャトルによるレーダー調査もしくは、GPS(Global Positioning System):全地球測位網、アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システムにより計測された標高であること。
例えば、エベレスト(8848m)への登山道などのように、非日常的な道は除外します。ちなみに、峠のことをチベット語で『ラ(La)』、英語で『パス(Pass)』と言います。それでは、第1位から順にご紹介していきます。
第1位:マーシミク峠(Marsimik La):標高5582m
マーシミク峠(Marsimik La)は、インド北部の標高約3650mにあるラダック地方最大の都市、旧王都レー(Leh)の東方約100kmに位置します。
標高はSRTMシステムにより5582mと計測されていますが、海外のサイトでは、『熟練したオフロードライダーやインド軍のジープであれば走行可能かもしれないが一般的なドライバーが走行可能かどうか疑わしい。』したがって、車両が走行可能な峠ではない。と主張する人が多数います。
ところが動画を検索してみると、決して熟練したとは思えないようなバイク乗りの方々の姿が多数確認できます。また、Google mapでは、「Marsimik La 5680m]と標高は異なるものの、クロスした道がハッキリと写っています。これらから、条件である「バイクもしくは、その他の車両での走行が確認できること。」を満たしていると判断し第1位としました。
しかしながら、熟練とは曖昧な言葉です。そこで、条件をもう少し加えることにしました。「バイクもしくは、その他の車両でプロドライバー以外の走行が確認できること。」、どうでしょうか。
第2位:セモ峠(Semo La):標高5565m
セモ峠(Semo La)は、チベット自治区中央部、西チベットやカイラス山へ向かうためのルート上に位置します。また、Google mapでは、そのルートを「S206」と表記しています。
標高は、GPS・SRTM・調査隊・学術研究所が行った計測値の全てが5565mで一致しています。また、週に一度、長距離バスの運行もあり日常的に利用されています。先のマーシミク峠(Marsimik La)に疑念を持つ人やWikipediaでも、このセモ峠(Semo La)を車両が通行可能な世界一の高さにある峠だと主張しています。
第3位:カラコルム峠(The Karakoram Pass):標高5540m
カラコルム峠(The Karakoram Pass)は、インドのジャンムー・カシミール州東部にあるラダック地方の最北部と中国(シンチアン自治区地域)を隔てる国境の峠であり、旧王都レー(Leh)の北方約160kmに位置します。Wikipediaには、「最も標高の高い峠だった。」と過去形で記載されています。
カラコルム峠(カラコルムとうげ、The Karakoram Pass)は中国のタリム盆地とインドのカシミールの間にある峠。カラコルム山脈をまたぐ、古代仏教の重要な伝来路のひとつであり、かつ最も標高の高いものだった。Wikipedia
第4位:スゲ峠(Suge La):標高5430m
スゲ峠(Suge La)は、チベット自治区の標高3,358mにある、チベット仏教の聖地「ラサ(拉薩 lha sa)」の北西の約110km、ニェンチェンタンラ(Nyenchen Tanglha)山脈に位置します。標高は、GPSとSRTMで共に計測されています。数は少ないがネット上の画像でも幅員の広い未舗装路が確認できます。また、「小型バス、トラック、大型車及び時々一般的な自動車なども移動する。」と記述されているものも確認できました。
右の石油地図?の位置から等高線を追い、座標点(29.895425,90.134497)としました。Google map には「304省道(S304)」と番号が記載されています。
このスゲ峠は、まだ存在があまり知られていないようで、位置を特定する座標が見当たらず苦労しました。
第5位:チャンラ峠(chang La):標高5360m
チャンラ峠(chang La)は、ラダック地方最大の都市で旧王都のレー(Leh)からのパンゴン湖へのルート上あります。峠名で検索すると日本人旅行者のブログ掲載も多数あり、ツアーもあるようです。世界一高い所にあるカフェの看板には、5360mと書かれていました。ブログを見ていると、日本人でチャンラ峠をバイクで越えた人もいました。
上の画像のように、峠には17800ft(5425m)と書かれたモニュメントのような物が建っています。しかし、残念ながら、この数値は間違っています。
第6位:カルドゥン峠(Khardung La):標高5359m
カルドゥン峠(Khardung La)は、インドのジャンムー・カシミール州、ラダック地方にある峠です。1988年には、インド軍による整備が行われ、その後バイクで訪れる旅行者も多いようです。標高は、GPSとSRTMシステムの数値とも一致しています。
峠には5602m(18380フィート)と水増しされた標高が書かれています。また、ギネスブックやナショナルジオグラフィックには、標高5682mと記載されています。この峠が長い間、世界第1位として君臨していたため現在でも、そのように表示しているサイトも多くあります。
第7位:タンラン峠(Taglang La):標高5328m
タンラン峠(Taglang La)は、インドのジャンムー・カシミール州東部にあるラダック地方の最北部に位置する峠です。標高の5328mは、SRTMデータに一致しています。
第8位:タングラ峠(Tanggula Pass): 標高5231m
タングラ峠(Tanggula Pass)は、中国チベット自治区・青海省に位置し、チベット高原の中央部を西北西より東南東の方向へ縦断しているタンラ山脈(唐古拉山脈)を越える峠です。標高5231mは、GPSシステムにより確認されています。
タングラ峠から約1キロメートル離れた所(標高5068m地点)には、世界で一番高い駅である青蔵公路の唐古拉駅があります。列車は高山病を防ぐための酸素マスクを装備しており、窓には紫外線をカットするフィルムが貼られています。
番外編:チュリニ峠 (Col de Turini) : 「進撃の巨人VSスバルフォレスター」
世界ラリー選手権 (WRC)の開催地、ラリー・モンテカルロでも有名なチュリニ峠(フランス)とコラボフリンダースレンジ(オーストラリア)を背景に、『FORESTER 進撃』篇を公開されました。今、最も熱い漫画の実写版が楽しめる「進撃の巨人VSスバルフォレスター」。予想以上の迫力で、映画公開が楽しみです。
編集後記
動画を見ていて不思議に感じることは、これだけ険しい峠を越えるのに使われているバイクがオンロードバイクが多いことです。オフロードバイクの方が走りやすいと思うのですが、人気が無いのでしょうか。
調べているうちに、凄く行きたくなりました。(日本の冬の寒さにさえ負けて、バイクに乗れないのに・・・。)